それは学生時代。夜の番組で、同じ学校の生徒が暮らす寮が紹介されるというので、見ていました。
6畳一間の、今でいうワンルームマンション仕立てのその部屋、狭いし大変なことになっているだろうと想像していました。年頃の女の子ですから、服もバッグも化粧品も、それはもう物持ちだろうと思い浮かぶからでした。
しかし。
画面を見た私は、頭を殴られたかのような衝撃を受けました。
え、こんなにおしゃれに、暮らしているの?
テレビロケが入るために、片付けもしたことでしょう。
しかし。そこは明らかに整然とした空間でした。
これまでの私は、雑誌の独り暮らし特集号を買ってきては眺めて、絶対に私の人生ではありえないとあきらめていた独り暮らしに憧れていました。
こんなおしゃれに暮らしたいなと思っても「そんな、雑誌の中の世界なんて、実際に生活できない」と実母に言われていたから。
「家は楽屋」というのが母の持論でした。
でも、今私と同じ学校に通う人が、この整った部屋に暮らしている。厳然たる事実は、現実を虚構だと断言し続けた母の言葉を真に受けてきた私に、計り知れない衝撃をもたらしたのです。
とあるサイトで見かけた「貧乏神は、もので溢れた押し入れに住み着く」という一文。
せっかく抜け出せたのだから、刷り込まれたとおりに暮らす必要なんてない。
うん、そうだ。そうなんだ。
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