白状すると、私は朝が大の苦手でした。
目覚まし時計がなったとき、地獄の底に引きずり込まれるかのごとく、ツラい思いをする、そんな寝起きの悪さ、親元にいた頃は母親とそっくりで、遺伝か体質かとあきらめていました。
世の中の人は本当に、ここまで苦悶しながら毎朝起き出しているのだろうか?
疑問はつきませんでした。
朝が早い職場にいた頃は、毎朝目を覚ますが拷問のようでした。
ベルがなる、古典的な目覚まし時計を設置しても、音が聞こえないこともしばしば。
帰宅後マンションのエレベーターを降りた途端、けたたましいベル音が聞こえてきました。
非常ベルが鳴っているのかと思ったら、なんとわが家の目覚まし時計だった、なんてこともありました。そんな騒音ですら、効果ゼロなのです。
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子供が生まれてからも、寝起きの苦しみは変わることなどありませんでした。
そんな私が、気がつけば早起きになったのは、この1ヶ月の話です。
何があったのでしょう?
ひとつは、常夜灯を消して、部屋を真っ暗にして休むことを勧められたからです。
メラトニンの働きのために、少しでも光はないほうがよいと。
確かに、寝起きの悪さは、完全に消し始めてから、改善しました。
もうひとつは。
仕事上の仲間というか、上司でも先輩でもある人物とのやりとりがきっかけです。
熱い人で、溢れんばかりの愛の人、そう描写しておきます。
本人も認めているように、男女問わず、困っていると言われたら助けずには居られない性分で。
無意識に、なんの疑問も抱くことなく、本人はそうやって仲間と接しているのだと思うのですが、気がつけばペースに巻き込まれ、思い切り心を乗っ取られていたのです。
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人たらし。
あまり美しくない言葉かもしれません。
私は完全に、圧倒されたのでした。
憎めなくて、強引なのに断れなくて、失礼なことを言われてもつい、許してしまって。
そんな人の言動に完全にノックアウトした私は、どういうわけか早起きに生まれ変わっていたのでした。