初めての育休中、子どもが歩くようになってでかけた広い芝生の公園で、その方と出会いました。
当時の写真を見ると、子供はまだ薄着でした。でも秋真っ盛りだったように記憶しています。
あの日の午後、公園の木々は、黄金色に輝いていました。
池のほとりの大きな石に腰かけて休んでおられたその方と、芝生にいた我々がどんないきさつでお話ししたのか、きっかけは思い出せません。
平日の午後、他にも子連れのお母さんは何組かいらしたようです。
でもなぜか、私たちに声をかけられたのでした。
その年の春、子供の保育園が決まらず、既に待機児童になっていました。
育休から職場に復帰しようとも、預け先が見つからなければどうしようもありません。
子供の年齢が上がるほど、募集枠は狭まります。
考え始めるときりがない、そんな思いを脇において、歩き始めた子供が思う存分動き回れる場所に連れていったのでした。
広い空が見渡せる公園で、私も先行きの不安から少し、目を背けられて、深呼吸できるひとときでした。
ひょんなことから、保育園がなかなか決まらずにいることを話したところ、その方はご自身の知る限りの情報を教えてくださったばかりか、もっと詳しい人を紹介するといってくださったのです。
初対面なのに!
でもなぜか、私には警戒する気持ちなど、沸き上がりませんでした。
連絡先を交換して帰宅すると、さっそく電話が入りました。
お知り合いに連絡したので、次の週末に引き合わせると。
一部始終を聞いた夫は、非常に不審に思ったようです。
とにかく、一度一緒に会ってから、判断してよ。
そういって、家族三人でその方のご自宅に出向いたのでした。
急な話だったのに、あたたかくご夫妻で出迎えてくださって、お知り合いにも紹介してくださったのでした。
その後もお電話を頂いたり、また公園でばったりお目にかかったりしました。
月日は流れ、運良く子供の預け先が見つかった私は職場に戻りました。
しばらく働いて再び産休、育休に入りました。
第二子を連れて四人でその公園に久々にでかけたのは、この春の連休でした。
職場復帰後はなかなか来ることも出来ず、本当にご無沙汰していたのです。
ご近所にお住まいのその方が、あの頃のようにまた、ジョギングにこられていないかな?と辺りを見回したのですが、お姿は見えませんでした。
さすがに人が増える連休に、わざわざ訪れないかな?と思ったのを覚えています。
先日、一枚の葉書が届きました。
時節柄の喪中ハガキです。
文面を見てはっとしました。
あの方が、夏に他界された、と書かれていたのです。
私の母と同い年だと、ハガキではじめて知りました。
ごく親しい方には、家族四人で写真をとってもらって送ろうね、と夫と話していました。
もちろんあの方にも、です。
第二子が生まれたこと、あのとき第一子が押しながら芝生で歩いていたベビーカーに乗せていること。
いろいろ、お話ししたいことがあったのに。
我が家の冷蔵庫には今も、あの秋の日に渡された連絡先の手書きメモが貼ってあります。
もう、お会いできないなんて。
また公園で、あの大きな石のところで、姿を見付けられると思っていたのに。
見ず知らずの私たちにお世話を焼いてくださったFさん。
本当に、ありがとう。
充分にお返しできなくて、ごめんなさい。
どうか安らかに、お休みください。
あの公園を、空からまた、眺めていてくださいね。
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