何年か前までは、母の日に鉢植えを贈ったりしていました。
私も、当たり前の親子関係に憧れていたのです。
父とは仲の良かった瞬間すらなく、生理的に受け付けないため、父の日に何かしたことなんて一度たりともありません。
せめて母の日くらい、何かしても、という思い込みを捨てて以来、私にとってこの日は、子供たちのかわいい作品を見るときになりました。
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それはバレエのレッスンの帰り道でした。
外に出掛けていて、母の日の贈り物を選べる、唯一のタイミングでした。
運よく私一人で買い物できる瞬間が、母の日の前日夕方に見つかり、目星をつけていた園芸店で、小さなマーガレットの苗を手に入れました。
母の日に渡して、母親に言われたこと。
「しょうもない、鉢植えなんか買って。」
その後、どんなやり取りをしたのか、私の記憶からはすっかり抜け落ちています。
そのマーガレットが、どうなったのかも。
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自分が子供たちから、工作やら折り紙をもらうようになり、どうしても母親に言われたことが解せないのです。
どういう意図で、娘の心を踏みにじるのか。
何をすれば私は母親に喜んでもらえたのか。
今もって、見当もつかないのです。
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もはや思い出すこともできない、当時の自分の心。
今はすっかり、街並みが変わってしまった、あの踏み切りの横の店先だけが、今もまぶたの裏に浮かびます。
その年の母の日の思い出が鮮明な限り、私は母親に感謝の言葉は出せないで生きるでしょう。