母は決して、娘の私を常に傷つけてやろうと思っていたわけではないんだと思います。
しかしながら、こんな逸話を思い出すと、母はよくもまあ自分のことを棚にあげて、娘を「口先女」と言えたもんだなあと、つくづく感じます。
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私がまだ実家にいた、学生時代の話です。
「お母さんはね、あなたの結婚式に、カリグラフィーでウェルカムボードを作りたいのよ。だから、カリグラフィーを習うわ」
手芸や洋裁が大好きで得意な母。
子供のころはワンピースにジャンパースカート、コートなど、手作りの服をたくさん着せてくれました。
カリグラフィーの前は、デコパージュを熱心に取り組んでいたので、どんな風に極めていくのかな?と思っていました。
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社会に出て、ことあるごとに「早く結婚しなさい」と繰り返すようになった母。
「あなたが結婚しないと、お父さんもお母さんも、今後の人生、決められへん」とまで言われたものです。
(今なら言い返します。私の人生に勝手に振り回されたいなら、とやかくいうなと。文句があるなら、子供の人生と関係なく、気の向くまま生きれば良いじゃないかと)
結局私は、わりとのんびりしてから、結婚したわけです。
さて、カリグラフィーのウェルカムボードは、どうなったかというと。
母は、習い始めてすら、いなかったのですね。
習うと宣言してから、実に10年以上の月日が流れていたというのに!!
その間、老親の介護もなければ、本人や家族の病気があったわけでもないのに。
あれだけ娘に、早く結婚しなさい!!と散々急かしていたのに。
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「あれ、カリグラフィーは、どうなったの?」
思わず訊ねていました。
「ああ、あれね、習おうと思って、教室の資料も取り寄せたのよ。だけどね、流派があってね、それでどうのこうの…」
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私が結婚して、数年の月日がたったのですが。
今年に入り、母が言いました。
「毎月配本になる、カリグラフィーのマガジンが発刊になったのよ。第一巻を買っておいてくれないかしら?」
ああ、カリグラフィーですか…
白けた気分になる自分に、気が付きました。
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これは私の両親にのみ限られる法則なのかもしれません。
「他人をけなしたり、批判したりする内容は、そのまま発言者に当てはまる」
天に唾はく、とは、このことでしょうか。
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蛇足ながら、母は今も、自分が口先だけだとは一ミリたりとも思っていません。
「お母さんはね、あなたと違って、口先じゃなくて、行動で示すのよ」と大見得を切りましたから。
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