母はお茶やお花を習っていたこともあり、着物をたくさん持っていました。
お嫁入りのときは、桐だんす一杯に詰め込んで。
そんな母の和装を見たのは、冠婚葬祭、私の入学式以外、記憶にはありません。
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「お母さんの着物、全部タンスごとあげるからね
」
母はよく、口にしたものでした。
それで私は、いつか着物が必要なら、母のを借りれば良い、そう思っていました。
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いつからでしょう。
母がいい始めたのは。
「お母さんの着物、時代も違うし、あなたとは体型も違うから、もう着ることないでしょ」
私は実際に、母の着物を見たわけではありませんから、なんとも言えません。
でも、あれだけ譲るって言っていたのに、それを拒み出したのはなぜ?
疑問は残ります。
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現実問題として、着物を譲られても、手入れが行き届く自信はありません。
結果的に、それは悪くない成り行きではあります。
しかしながら、いざ娘に譲るというときに、それをしないということは、母はどんなことばを重ねようと、私に譲りたくはないんだ、と思うのです。
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着物だけでは、ありませんでした。
ダイヤモンドも、パールも、エメラルドも。
「全部、あなたのものよ」と、確かに何度も聞かされました。
何一つ、私の手元には来ていません。
きっと、生前には来ないでしょう。
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他のお母様は、わかりません。
私の母の娘への本音、それは、絶対に譲るもんか!!なんでしょうね。
第二話へ続く
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