あれは結婚式の前日、夕方の出来事でした。
新郎、新婦とその父母の四人が教会でリハーサルをするため、牧師先生と面会し、打ち合わせをしました。
丘の上にある教会の礼拝堂で、翌日の挙式の段取りを確認、実際に通路を歩いたり、席で立ったり腰かけたりしました。
日もくれて終わりになり、坂の下の最寄り駅に歩く途中。
父がびっこをひいています。
気付いた母が「お父さん、足か腰を怪我したのかしら?」と言い出したのがきっかけで、父を見ると~縁石に足をかけて、何かゴソゴソしているところでした。
なんと、履いていた革靴の底が取れた、というのです。
明日の本番に備えて履いていた革靴でした。
梱包紐を父が持っていたので、底と上部?を結わい付けて、何とか歩けていました。
夕食を四人でとる予定を急きょ変更、父は母と、駅前の商店街で靴の修理を探すことに。
あとで聞いたところ、靴を新調した、とのこと。
修理は出来なかったそうです。
靴屋さんで言われたのは
「この靴、履かないで長年取っておいたものでしょう?」
「劣化していますから、底が剥がれて当然です」
もちろん修理できる代物ではなかったのでした。
時間の制約もあり、坂の下の庶民的な商店街で買った間に合わせの靴で、次の日父は、娘の挙式に臨んだのでした。
*****
前日に壊れてくれて、いまから思えば命拾いしたものです。
厳粛な礼拝堂で、新婦の父の靴底が剥がれたりしたら、赤面ものでした。
いつも私の足を引っ張る、はずかしい思いばかりさせる父が、これ以上お荷物にならなかったのは、神の思し召しでしょうか。
どんな靴だったのかしりませんが、役目を果たせないばかりか、ぶざまな場面にしか役に立たなかった…本人は後生大事にしていたつもりでしょうが、靴にも失礼な話だったのは間違いありません。
※後日談
挙式から三年後、息子のお宮参りの日。
写真館で撮影し、お詣りに向かうためにタクシー乗り場に歩いていたら、また父はびっこをひいていたのです。
なんと、あのときの破損靴を履いていて、また底がはがれたというのです。
プロが修理できないといったのに諦めきれず、自分でボンドをつけたとのこと。
挙式は都内で、靴も新調したので、実家に帰る前に当然破棄したものと思っていたら…まだ履いてみたという。
バカか、このクソジジイ!!
いい加減懲りろ!!
人の親となっていた私にはもはや、罵倒の言葉しか頭をよぎりませんでした。
孫の晴れ舞台まで泥を塗るつもりだったのか…
どこまでケチなのか、しつこいのか、はたまた狂っているのか、わたしには全く理解できません。
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